日本人蒐集家旧蔵.
繭山龍泉堂, 1976年.
Japanese private Collection.
Mayuyama & Co., Ltd., Tokyo, 1976.
元時代の景徳鎮で作られた瓶です。別名の「玉壺春」は、盤状の口縁部から頸部が窄まり、また胴部へかけて広がりを見せる瓶の呼称で、元来は酒を入れる瓶であったようです。薄作りで手取りは軽く、端正な造形からは上品な佇まいが感じられます。元時代らしい強い青花で描かれた菊唐草文はリズミカルなもので、どことなく中東のアラベスク文様にも通ずる反復性があります。本作は元青花の中では比較的文様が整理されており、元に続く明時代の洪武、永楽へと続く優雅な雰囲気も漂ってきています。
白磁にコバルトでもって彩描する青花(染付)は、ユーラシアを股にかけた大帝国、元の時代に創始されたと考えられています。西方の産物であるコバルトと、中国で完成を見た景徳鎮の白磁が出会うことで出来上がった極めて国際的な様式と云えます。青花はその後世界へと広まり、イスラーム、李朝、日本、欧州にも影響を与え、現代にも通用する普遍的なものとなりました。Blue & White を生み出した初源的な、強靭なエネルギーを元青花は内に有しています。
本作は龍泉堂で1970年代に取り扱った品物で、古箱が付随しています。