五代十国時代に越州窯で焼造された青磁の盤です。晩唐後葉から五代十国にかけて作られる器形で、とくに越州窯で多くみられます。手の落ちるものでは、見込に焼成時に重ねて焼いた目跡がありますが、本品は一枚ずつ匣鉢に入れて焼造された上位の製品ラインに属しているため、見込みに目跡はなく畳付きの処理も丁寧です。
越州窯の輪花盤は年代が下がるにつれ、畳付き外円に目跡がそのまま付くものから、輪高台のように釉を剥いで、その部分に目跡が主にくるタイプに変化します。また、口縁部も比較的薄くなり外側に開いてゆき、宋磁に通じる気分が色濃くなっていきます。本品はそういった時期の作例で、以後の北宋磁器の隆盛を予見させる雰囲気があり、大変魅力的な作品です。
釉調も比較的良好で、この時期の越州窯作品にありがちな釉の剥落や痂せも殆んどなく、また傷や補修などもございません。この手の越州窯は平安時代に既に将来された形跡があり、当時の貴族階級に珍重されていました。手元で愉しんでいると、そういった時代の香りが、そこはかとしてくるかもしれません。