繭山龍泉堂 1980年代.
Mayuyama & Co., Ltd., 1980s.
10世紀後半、五代から北宋初期に越州窯で焼かれた杯です。無駄なくシャープな造形ですが、繊細に過ぎる弱さはなく芯の通った作品です。やや斜めに開いた高台もすっきり上品で、見どころとなっています。高台内には輪状の目跡が残っており、畳付まで施釉するという丁寧な作りです。
宋代の越州窯には、焼成が不安定だったためか淡い釉調から深みのあるものまで多様な作例が見られます。その中で本作の色調は力強く男性的で、朽葉色の落ち着いた風情があります。しかし良い越州窯の作例は茶系の色調になっているものでも、釉中に爽やかな新芽のような青磁色もそこはかと感じられる、釉の奥行があることが重要な要素と云えます。
状態は良好で、しっかりと焼き上がっているため、実際に酒器として使う愉しみも考えられる一品と云えるでしょう。