北斉から隋頃の青磁壺です。胴が強く張り出した器形からは、強い存在感が漂っています。その器体上に施されたしっかりとした四耳と、丁寧な縄目状の圏線の貼り付け、長短の線刻から花弁が立体的に飛び出るように表現された蓮弁の装飾が印象的です。青磁釉も落ち着いた色調に発色しており、特にフリルのようになった胴部には濃く溜まりを見せます。また、さらに下部へビードロのように垂れ下がった釉の流れも鑑賞の見どころと云えます。
青磁は漢時代の終わりに完成し、江南地方の越州窯を中心として発展してきましたが、北魏~北斉頃にはそれらに触発され華中や華北の青磁が生産されることになります。南朝の貴族文化の元で成熟した越州窯の青磁には、造形や線刻の文様などにどこか優雅な様子が伺えますが、北朝の青磁はその優雅さに加えて質実剛健な雰囲気を加味することになりました。同時代の青磁は単なる古越磁の写しではなく、一見して判別できるオリジナリティがあります。およそ北斉から隋の青磁は胎土が比較的白く緊密で硬質な印象で、本作にもその特徴が見受けられます。
北斉から隋頃の青磁は同時期に完成する白磁へ連なる重要な作例であり、また後の北宋汝窯へ至るまでの華北の陶磁の起点として近年重要視されてきています。美的にも優れたものがあり、さらに評価されるべき魅力のある作品と云えるでしょう。