3世紀末、西晋時代に焼かれた獅子形の容器です。はっきりとした用途は不明ですが、一種の祭器、明器と思われ、獅子形、羊形などの動物形容器が古越磁作品には散見されます。雄々しい獅子の姿が忠実に再現され、牙を剥きだしにした表情、豊かなたてがみ、鋭い爪などが力強く表現されており、優れた彫塑作品として鑑賞されるべきものと云えます。尻尾は装飾的で優雅に表され、後面からの見どころとなっています。これらの力強さに加えて、どこか貴族的で上品な雰囲気が漂うことも古越磁の魅力かもしれません。
彫刻的な造形に加えて、完成度の高い青磁釉も古越磁の特徴でしょう。西晋期の青磁は清澄な透明感がありながらも、器体の凹凸に溜まった釉薬は淡い暗緑色となるもので、繊細で美しい玉のような印象もあります。この釉薬による濃淡が陰影のような効果を上げて、獅子の体躯の肉感や表情などがより立体的に浮き出しているように感じられます。
古越磁獅子は古越を代表する器種ゆえに、真贋の難しい作品も多く見られます。また実際に晋代のものでも、型や刻線が粗雑で造形のレベルが高くない作例も残っています。そのような中で、本作のような高い造形力、釉調は間違いない逸品でその規範となるものでしょう。