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白釉盞(鉅鹿)

磁州窯
北宋(11〜12世紀)
高 5.8 cm 口径 12.1 cm

Cizhou ware
Northern Song dynasty
H. 5.8 cm, Mouth Dia. 12.1 cm




SOLD

北宋末に磁州窯で焼造された白磁の盞です。白い化粧土を厚く施した上から透明釉を掛けて焼成されており、力強く垂直に立ち上った高台内には“官”という当時のものと思われる墨書が残っています。元は純白の呈色を示していましたが、長期に渡り土中にあったため赤茶色の滲みが随所に入り、こういった白無地に滲みがみられる磁州窯の遺例は“鉅鹿手(きょろくで)”と呼ばれ、ことに日本で珍重されました。

滲じみやむらに美的なものを見出すのは、日本人特有の感性とも云え、萌芽は平安期にすでに見られますが、室町期に美意識として概ね完成されたと考えられます。従って日本においては極めて伝統的な美意識と云え、代表的なものでは室町水墨の諸作品や江戸期の宗達や琳派諸家による“たらしこみ”技法などです。このような観点により美を発見したものに、李氏朝鮮時代のやきものなどがあげられますが、完成度を至上とする中国陶磁においては、そういった美意識が入り込む余地が無く、唯一とも云えるのが、この鉅鹿手と呼称される磁州窯の一群です。

鉅鹿とは、北宋末に川の氾濫で埋まってしまった河北省南部の町の名で、1920年ごろに遺跡が発掘され大量の陶磁器が出土し、それらが市場へ流れ出ました。欧米においてもたいへん人気があったようですが、上述の理由により、とくに高く評価したのは日本人で、蒐集家たちは非常な感心でこれを受容したようです。

本品は滲みの入り方や色調、釉調及び器胎の雰囲気、いずれも典型的な鉅鹿手の特長を示しており、まさに二十世紀初頭に発掘された作品と考えられます。本作はとくに器形が珍しく、外反りの盞形の形状は遺存例が極めて少なく殆ど見たことがありません。見込みはうっすらと輪花になっており、この点もたいへん好ましいです。杯にも使える大きさで、手元で愛玩したくなるような、まさにコレクターズアイテムといった作品です。