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灰陶鬲

殷中期(前14世紀〜前13世紀)
高 13.6 cm 幅 15.1 cm

来歴

Sammlung Martin Fischer(1882〜1961年)およびその遺族旧蔵.




Mid Shang dynasty (14th century BC–13th century BC)
H. 13.6 cm W. 15.1 cm

PROVENANCE

Sammlung Martin Fischer (1882–1961) Collection, by descent to a family member. 






SOLD

殷時代の中期に作られた煮炊きのための器、(れき)です。シャープな盤状の口縁部、三足の膨らみ部分から脚先へ鋭く細くなる様は、どことなく同時代の青銅器の鋭さに通じるものを感じさせます。洗練さと力強さの共演という殷時代の文物に共通する美質が、同時代の土器にも宿っていることが本作を見れば理解されるでしょう。堂々たる風格が感じられる優品です。

19世紀末に獣骨や亀甲に刻された甲骨文字が発見されたことを端緒に、王懿栄、羅振玉や王国維といった金石学者達によって、それまでは『史記』上の伝説とされていた殷王朝の実在が確かめられていきました。そしてその不断の努力は、1928年にはじまる河南省安陽に於ける殷墟発掘となって実を結び、殷王のために作られた凄まじいまでの青銅器や玉器、骨器が当時の人々の耳目を驚かせました。

その殷墟発掘の時代、1930年代に作られたと思われるこの鬲の古い支那箱は、鬲がすっぽりと収まる三角形の特別製で、この土器を貴重な存在として大切にしたことが窺えます。旧蔵者Sammlung Martin Fischer (1882〜1961年)は、戦前に上海の総領事を務めたほどの人物で、オンラインコレクションに掲載されている灰陶爵も所蔵していました。まさに、本作は殷墟が発掘された1920〜30年代に世に出たものと考えられます。