中川一政(1893〜1991年)旧蔵.
小山冨士夫(1900〜1975年)箱書.
Nakagawa Kazumasa (1893–1991) Collection.
Box inscription by Koyama Fujio (1900–1975).
古代中国では長きに渡って副葬のための陶俑が作られました。死後に仕えた武人、官人や楽人といった人形のものに加え、動物俑にも様々なものがあります。特に駱駝は北朝から唐時代に優れた作品が作られており、シルクロードを通じて西方の文化が流入してきた時代のシンボルのような存在だったことが窺えます。特に北魏時代の作例は、洗練された写実性と、仏教美術にも通じる深い精神性をたたえており、陶俑の中で一段と評価の高い時代となっています。
その北魏俑の魅力は、本作においても存分に味わうことが出来るでしょう。歯を剥き出した表情や体毛の表現、鞍に備え付けられた西方の産物と思われる折り畳んだ敷物の柔らかなボリューム感など、実に見事な造形です。その鞍の前後には吊られた魚と兎がリアルに表現されており、千里の道を行き交った当時の行商者の空気感までも看取されるようです。
画家、中川一政(1893~1991年)の旧蔵品で、陶磁研究者小山冨士夫(1900〜1975年)による箱書がなされています。20世紀の初めに市場へ登場した陶俑は、日本ではその彫刻的な魅力を評価した画家などの芸術家グループに愛好されました。優れた陶俑の持つ高い造形性が、彼らを感化したに違いありません。