Wilfrid Fleisher(1897〜1976年)およびその遺族旧蔵.
Wilfrid Fleisher (1897‑1976), thence by descent in the family.
南宋時代の景徳鎮で焼かれた、青白磁の杯です。青白磁の色には品の良い青みがあり、清涼な印象です。
この筒形の杯は珍しい器形ですが、宋磁らしい洗練されたフォルムです。磁胎はやや厚みがあり、青白磁作品の中では力強い印象があります。胴部に廻った凸線は金属器を模した名残と思われ、シンプルな造形に引き締まった印象を加えています。直線的に立ち上がった高台は全体の器形によく似合ったもので、露胎になった底部はかっちりと焼き上がった自然な良さがあります。
旧蔵者 Wilfred Fleisher (1897~1976年) は、父が日本の英字新聞の創設者だったために日本で生まれ育ち、東洋美術に傾倒していきました。1920~30年代に蒐集を始め、戦後は欧州へ移住し「China Club」と呼ばれた東洋美術愛好家のサークルの面々に出会います。そのメンバーであったGustav IV AdolfやJohan Gunnar Anderssonといった重鎮達と親交を持ちました。本作も美しく珍しい一品ゆえに、往時には彼らによって議論の対象となった様子が偲ばれます。