『スリップウェア』誠文堂新光社, 2016年, 図版104.
Slipware, Seibundō Shinkōsha, 2016, pl. 104.
このスリップウェアは18世紀後半~19世紀頃のイギリスの作で、パイなどのオーブンで焼く調理の際に使われる日用の器として作られました。実用に耐えるために胎は分厚く堅牢な作りをしており、日々の食卓に供されたものと思われます。
黒褐色の地に、黄線で描かれた抽象的な文様にこの作品の魅力があります。イギリス陶器を代表するスリップウェアは、その名の通りクリーム状のスリップ(化粧土)を用いて簡略ながら変化のある文様が施されることが特徴で、本作でも
スリップウェアは、近代に民藝運動の主唱者である柳宗悦(1889〜1961年)によって見いだされ、イギリスの風土に根ざした民衆芸術の一つの形として再評価がなされてきました。上記のような親しみやすさと現代的な美質を有するために、今後ますます人気が高まる分野と云えるでしょう。