「朝鮮古美術工藝展覧會」大阪高島屋, 1936年, no. 132.
『朝鮮古美術工藝展覧會図録(復刻版)第7巻』東洋経済日報社, 1984年, 図版132.
Chōsenkobijutsu Kōgei Tenrankai, Osaka Takashimaya, Osaka, 1936, no. 132.
Chōsenkobijutsu Kōgei Tenrankai Zuroku (Fukkoku-ban) Vol. 7, Toyo Keizai Nippo, 1984, pl . 132.
朝鮮時代15世紀後葉に焼かれた象嵌刷毛目文の碗です。一般に三島手と呼称される部類に属し、高麗の象嵌青磁からの流れを汲んでいます。従ってグレーの胎土に白泥で象嵌を施した上から、青磁釉をかけて焼成されており、その後の李朝陶磁とは一線画す清涼で素朴な味わいが魅力です。
本品は器形も高麗青磁の名残りを多く残しており、小さく引き締まった高台などは高麗青磁が手本とした宋磁をも想起させます。そのせいか、どこか中国陶磁に共通する美質を有しているようで、中国陶磁を主に扱う我々の琴線に触れるところが多分にあります。繭山龍泉堂の重要なお客様であった横河民輔(1864〜1945年)は、中国鑑賞陶磁の大コレクターであり、そのコレクションの大部分は現在東京国立博物館の所蔵となっています。その中に、本作と同手の作品が含まれており、おそらく横河民輔も上記のような美質をこの手の作品から看取したのではないかと思われます。
昭和十一年(1936)の十一月に大阪長堀橋の髙島屋で催された京城文明商会による展観売立に出展されており、来歴も申し分ない作品です。