唐時代後葉に越州窯で焼成された青磁の小盒子です。唐時代は三百年近くあり長期に及ぶため、初唐・盛唐・中唐・晩唐の四つの時期に区分して捉えられています。本品の製作期はその中でも晩唐にあたり、片切り彫り系の刻花によって花文様があしらわれています。
畳付きに見られる四つの釉剥げは、焼造時についたと思われる目跡で、蓋の方の目跡は身との接合部の露胎部分に付着しています。器形は側面から見ると、身から蓋にかけて垂直に立ち上がっており、下部から上部にかけて徐々に広がっていくタイプと比べて、古様な形状を残しているといえます。
おおらかでふくよかな作行に“大唐”の名残が感じられ、小さいながら、ちまちまとしたところのない好ましい作品です。