日本伝来.
Old Japanese Collection.
北宋時代にその北方に位置した遼(契丹(きったん))で焼かれた珍しい水注です。瓜稜形に成形された胴部は柔らかさの中に鋭さがあり、祖型であったと思われる金属器の名残を見せます。装飾的な把手も見どころでしょう。編み込まれた植物製、もしくは刻された革製の覆いが緻密に再現されています。そこから三方に伸びた根元に付く飾りも明らかに金属器を元にした意匠で、非常に繊細な作りをしています。遼の時代には唐や北宋の影響を受けて優れた金銀器が作られており、陶磁器においてもその趣味嗜好が感じられます。遼代の陶磁器では白磁が特に好まれ、戦時に乗じて定窯の陶工を連れ帰って焼造に従事させたとも伝えられます。それゆえに遼では定窯と見紛う上質な作例も散見され、本作のような優れた作品は最高級の遼磁であると考えられます。高台の丁寧な作りや、水注全体の造形には神経が行き届いており、一般的な定窯作品よりも上位の美質を有していると云えるかもしれません。