岩崎小彌太(1879〜1945年)旧蔵.
奥田誠一編『支那工藝圖鑑 第2輯』帝国工藝會, 1932年, p. 11.
Iwasaki Koyata (1879–1945) Collection.
Okuda Seiichi (ed.), Shina Kōgei Zukan vol. 2, Teikoku Kōgeisha, 1932, p. 11.
唐時代に流行した加飾法の中で、特に強い視覚的印象を与えるものの一つは本作に用いられる練上技法でしょう。異なる色の胎土を混ぜ合わせることで生み出される文様は、自然石の斑紋や流水のような美しさを有しています。この陶枕では器の天板に四輪の花文を主文様として配し、その周辺と器体側面は波のような文様と余白を上手く組み合わせており、ややもすると繁縟となりうる練上技法が見事な構成力によって纏められています。不思議と存在感のある方形の造形と相まって、古美術の枠を越えた鑑賞美術として成立しています。
この陶枕は中国美術の数々の優品を蒐めた『支那工藝圖鑑』に、三菱財閥の総帥岩崎小彌太氏の蔵品として所載されており、古く1930年代には日本に将来されていたことが分かります。唐代の文物は20世紀初頭に中国大陸各地で行われた鉄道敷設工事の影響で、漢~唐時代の墳墓が集中する地域が横断されたため市場に登場することになりました。世界中の美術館に収まっている名品達の多くはこの時代に出土したと云われています。本作もその時代の香りを纏った、本格派の鑑賞陶磁です。