豊満な球形の胴部が目を引く青磁の水注です。口縁はラッパ状に開き注口の上側が面取りされ、胴部には4本の縦稜線が施されています。頸胴部に巡らされた圏線や把手の形状から、金属器を写したものであることが窺われます。高台内まで総体に施された釉薬は黄味が強く発色し、高台脇を見ると若干粗めの胎土が使われていることが見て取れます。
把手と注口が付いた水注という器種は唐時代から見られるようになったと云われています。当初は、短い頸部、縦長の胴部、多面体の直線的な短い注口という特徴を有した器形でしたが、五代に近くなるにつれて、本作のように頸部が伸び、注口も長くなっていきました。本作は、胴部の豊かな膨らみなどに唐代の雰囲気が看取されるものの、宋磁に繋がる息吹が感じられます。
口縁部や高台に古い補修があります。