Cleveland Museum of Art, クリーブランド.
Cleveland Museum of Art, Cleveland.
高麗青磁の中でも異彩を放つ青磁鉄絵の梅瓶です。青磁釉を掛ける前に鉄絵でもって文様を描いた青磁鉄絵は中国陶磁の影響で始まったと云われていますが、高麗では中国よりもこの技法がより好まれたようです。本作はこのタイプの作品では堂々としており出色の出来と云えます。
肩が張った逆三角形の形状、全体を埋め尽くす牡丹唐草の文様の組み合わせは北宋期の磁州窯の搔落し梅瓶を想起させます。ただし高麗ではその単なる模倣に留まらず、磁州窯よりも意匠が洗練され装飾性のより高い優美なものへと昇華させていることは本作からも看取されるでしょう。また青磁鉄絵のタイプは器形が緩くなりがちですが、本作は造形のレベルも高く器形の曲線の中にうつわの骨格がきちんと残っています。北宋の香りが漂いながらも、典雅になった高麗美術の良さが感じられる作品と云えるでしょう。
底部には多数のコレクションシールや展示の管理番号が貼られており、中にはクリーブランド美術館のシールも確認できます。磁州窯の白地黒搔落し梅瓶の優品として知られるDikran Khan Kélékian(1868〜1951年)のコレクションの梅瓶と似たシールの構成になっており、本作も欧米で20世紀初頭から珍重された作品と考えられます。