淡い青緑色に発色したシンプルな青磁の杯です。緩やかに立ち上がった側面とやや高く外開きになった高台のバランスは絶妙で、無駄のないフォルムとして完成しています。シャープさのある器形のため一見線が細くも見えますが、その胎は強固な骨子に支えられています。僅かな加飾として口縁と見込みに圏線が施されることで、全くの素文よりもさらに引き締まった印象となっています。
唐時代と北宋時代を繋ぐ五代十国時代は政治だけでなく、美術にとっても非常に重要な時代です。安史の乱を経た中唐期以降には社会が大きく変革し、貴族的で典雅な香りの漂う作風から実用的で格調高く洗練された北宋陶磁へと向かうことになりました。本作はまさに唐時代を脱却し、宋磁の段階へと到達したことが看取される一品と云えるでしょう。
口縁部に補修があります。