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延臣図

ムガール朝(17世紀)
縦 18.7 cm 横 10.5 cm

Mughal empire (17th century)
H. 18.7 cm W. 10.5 cm




インドのムガール期に描かれた細密画、ミニアチュールです。ペルシアの細密画に影響を受けて発展したインドのミニアチュールは、17世紀の王シャー・ジャハーン(在位1628~58)の庇護のもと宮廷絵画として隆盛を極めました。本作はその画風を引き継いだ頃の作例と思われます。裏にはペルシア語の四行詩(ルバーイー)が伸びやかに書かれており、この文字もカリグラフィーとして鑑賞すべきものでしょう。

絵画の主題は宮廷に仕える高官です。側面を向いた人物図はインド細密画の典型で、非常に抑制の効いた構図です。それゆえに品格の高さと、細部の精緻さが際立っています。高い技量で延臣の人間性までよく写し出されており、年齢を重ね精神的にも成熟した人間であることを感じさせます。また衣服の皺の表現は超絶を極め、技巧的でありながら柔らかく自然で、身体に重なる衣の薄さがよく伝わります。骨格と筋肉はがっしりとしているようです。またこの線描の精緻さと比して色彩の表現が面的で軽やかなこともこの作品の面白い点と云え、大変魅力的な部分です。

ペルシアやインドの細密画は、世界の絵画と比較しても高い芸術性を有していることは疑うべくもありません。大英博物館やメトロポリタン美術館など欧米の主要な美術館では細密画は主要な一ジャンルとなっていますが、日本では優れた細密画を目にする機会が多くありません。是非魅力の一端を感じて頂きたいと思います。