唐時代の後半期に作られた水注です。厚みのある胎、把手が太めで力強い形式、底部が平らなベタ高台であることは、盛唐期に多く見られる水注の様式を継承しています。その一方、全体のプロポーションが縦長で頸部が長くすらりと伸びやかな器形は、唐に続く五代から北宋へ至る形式の移行を感じさせます。
比較的濃い色の土ゆえに白土による白化粧がなされています。その上に爽かな青緑釉によって淡く点彩された技法などは、のちの宋代に隆盛を極める磁州窯のようでもあり、様々な観点からも興味深い作品です。
こういった唐の作例は出土品が殆どであるため、品物の状態が悪いものも多く見られます。しかし本作は釉薬のカセも比較的軽微で、焼造当初の瑞々しい釉調を今に伝えている点が好ましく思われます。特に胴部に施された青緑釉は透明感があり輝石のように艶やかです。ぜひ一度ご覧になって頂きたい作品です。