Spink & Son Ltd., ロンドン.
Roger Soame Jenyns(1904~1976年)旧蔵.
「Loan Exhibition of Japanese Porcelain」The Oriental Ceramic Society, ロンドン, 1956年, no. 65.
Spink & Son Ltd., London.
Roger Soame Jenyns (1904–1976) Collection.
Loan Exhibition of Japanese Porcelain, The Oriental Ceramic Society, London, 1956, no. 65.
古九谷様式と呼ばれる隅取菱形の色絵小皿です。美しい白色の素地に色絵が映える華やかな作品です。見込みには鮮やかな濃彩で花卉文が描かれています。内側面には古くから伝わり当時の染織でも多用されていた業平菱と古九谷らしい菊文の充足文が染付と緑彩で充足され、口縁に鉄釉による口紅が施されています。一方、外側面には染付のみ用いて牡丹文で描かれ、高台には櫛目文、高台内には角福銘が入っています。
日本初の磁器焼成に成功した九州の有田では、当初、古染付などの影響の強い染付磁器を生産していましたが、1640年代に入って色絵磁器の生産が開始されます。その色絵磁器はその後、古九谷様式、柿右衛門様式、鍋島へと発展し、その市場も主に国内、海外への輸出、将軍家や武家への献上と棲み分けされていきます。
本作に目を向けると、器形や表面の絵付けには既に上述の古九谷様式らしい特徴が看取できますが、外側面には後の古九谷様式では使われなくなる施文が見られ、古九谷様式の中でも初期の頃の作と云えましょう。
旧蔵者のRoger Soame Jenyns(1904~1976年)は、大英博物館の日本・中国美術研究者で、中国陶磁や日本陶磁に関する著作を何冊も残しています。また、確かな目を持つコレクターとしても知られており、ロンドンで1956年に開催されたOriental Ceramic Societyによる「Loan Exhibition of Japanese Porcelain」には本作を出品しています。