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色絵竹虎文八角鉢

有田 柿右衛門様式
江戸(17世紀)
高 6.8 cm 口径 23.8 cm

所載

繭山龍泉堂『龍泉集芳 第一集』便利堂, 1976年, 図版1408.
永竹威『陶磁大系 第二十巻 柿右衛門』平凡社, 1977年, 図版14.




Arita ware, Kakiemon style
Edo, 17th century
H. 6.8 cm Mouth Dia. 23.8 cm

LITERATURE

Mayuyama & Co., Ltd., Mayuyama Seventy Years Vol. I, Benrido, 1976, pl. 1408.
Takeshi Nagatake, Kakiemon, vol. 20 from the series Tōji Taikei [Great Lineage of Pottery], Heibonsha, 1977, pl. 14.






竹と虎を色絵で施した八角形の鉢です。17世紀中期の有田で焼成された柿右衛門様式の作品です。見込みの白い素地に大きく余白をとって意匠を描いています。口縁には鉄釉による口紅を施し、その内側に花唐草が描かれています。高台は無銘で目跡が三つ見られます。八角形の成形も美しく口縁や稜線には鋭さが看取できるほどです。柿右衛門様式の特徴の一つとして濁手(にごしで)と呼ばれる乳白色で透明度の高い素地が挙げられますが、本作の濁手は大変完成度の高いものと云えます。その濁手の魅力を引き出しているのが、素地を大きく見せて配した竹と虎のアシンメトリーな構図です。同じ文様構成の柿右衛門の作品は多く残されていますが、本作のように風に揺れているような竹のしなる様子や、厳めしい虎の面貌まで表現されているものはなかなか見られません。明度の高い美しい彩色―特に柿の色のような赤色―と共に、盛期柿右衛門の特徴を余すことなく備えた佳品です。

柿右衛門様式は1640年代にその焼成を開始しましたが、本作のような濁手や明度の高い彩色などの特徴を持つ作品が作られるようになったのは1670〜80年代以降だと考えられています。一説には有田の色絵初期のものは中国の明末景徳鎮窯の色絵磁器を、盛期の柿右衛門様式は清初康煕期のものから影響を受けたとも云われています。

本作はかつて繭山龍泉堂で扱ったもので、1976年発刊の龍泉集芳にも掲載されています。また、陶磁大系にも所載があり、数ある柿右衛門様式の作品の中でも質の高さが評価されていることの証とも云えましょう。