明時代末期に景徳鎮民窯で作られた「天啓赤絵」と呼ばれる作品です。「天啓年製(1621~1627年)」と銘の入った作例が多く見られることから同時期の五彩の作例を総称したもので、染付の地に上絵付で自由闊達な文様が描かれているのが特徴です。この盤にも戟を携えた騎馬人物が中心に描かれており、何かの物語の一場面なのでしょう。自然の表現も面白く、下部には朱色の花が横方向にリズミカルに配置されるのに対し、上部の山と樹木は縦方向に伸びやかな構図でデザインセンスの高さが感じられます。天啓赤絵の皿は16センチほどのものが多く遺されてますが、本作は珍しく30センチ近い大きさがあるためにその分画面に迫力があるのでしょう。
天啓赤絵の器形は歪み、釉が剥がれ、砂が付着したりと陶磁器としての欠点がありました。しかしそれらを当時輸入した日本の茶人達は、この欠点に新たな美質を見出しました。歪みを自由な造形として、釉はげは「虫喰い」と名付け風情ある見所へと転換させました。本作はまさにそのユニークな美質が現れた一品です。口縁部の虫喰いを隠すために所々塗られた緑釉はアクセントとなっています。また裏面の釉が剥けた箇所や付着物上にも緑釉を塗っており、陶工が機転を利かせた即興的な面白さが感じられます。