春秋から戦国時代にかけて造られた灰釉陶は、青銅器や漆器を元とする祖型を忠実に写し取って造られています。春秋戦国時代の青銅器は殷周時代のものに比して、より実用を意識したシンプルな器形に変わっていきます。灰釉陶もその変化に呼応するように祖型をシビアに写し取りました。さらに釉薬は殷周代の原始青磁で使われた単調なものから、均一で美しい色味や釉調の安定感を向上させるために長石の粉を混ぜた灰釉が掛けられています。こちらの灰釉双耳洗はその特徴を良く表している一品です。
とてもシャープな印象を受ける器形です。口縁が鋭いラインで造形されており、青銅器特有の厳しさを写そうとする苦心が見て取れます。胴もとてもスマートに造られており、細い弦文の刻みがより厳しさを引き立てています。特に目を見張るのは見込みから口縁にかけての立ち上がりです。直線的な印象を受けつつも、底部のやや盛り上がった造形や、なだらかな曲線を描きつつシャープに立ち上がりを見せる姿は、製作者の繊細で丁寧な仕事ぶりが伺えます。鋪首は饕餮を思わせる形で象られ、殷周期で目立っていた神聖性が春秋から戦国時代にかけて幾何学的な様子に移り、仄かな宗教性を残すのみになっています。灰釉は底を除いて全面に施釉されており、暖色系の深い緑色をのぞかせる釉調は、ほぼ青磁と言っても差し支えない完成度を誇っています。