前漢時代に作られた熊を象った作品です。どっしりと座した姿からは不思議な存在感が感じられます。胸部や腹部にわずかな凹凸を付けるのみのシンプルな技法で作られていますが、非常に効果的に熊の身体の立体感が表現されています。灰色の胎土の上には加彩がなされ、髭なども描かれており、丁寧な作ぶりが感じられます。
漢時代には王侯貴族を中心に墳墓を豪華に飾り立てる厚葬の風のために、様々な副葬品が陶器で作られることになりました。多種多様な器物が作られましたが、そういった作品の脚部には熊のデザインが採用されたものが多く見られます。これは漢代工芸に特徴的なもので「熊脚」とも呼ばれます。本作は背面に板状の部分が接合していることから、まさにその熊脚の一つで何らかの器物を支えていたと考えられます。
この熊脚は遺された作品の中では大きく、立派なものです。また耳と髭が顔と一体化したようなハート形の顔の形状もあまり類例は見られませんが、数少ない同種の作例として日本民藝館所蔵の「厨子形明器」の熊脚があります。高50センチにもなる立派な建物を支える脚部は本作と同手のものであり、このような作品の一部であった可能性が考えられます。