印文硬陶は新石器時代の中国東南部で出現し、それまでの黒陶や灰陶とは異なり高火度で焼成されたもので、胎は薄くさりとて丈夫な実用器でありました。本作のような戦国期のものはより一層薄胎となり、その成形や焼造技術は後の時代の青磁や白磁といった陶磁器の先駆けとなったことは言うまでもありません。また考古の観点からだけではなく、シンプルな造形ゆえのモダンな趣も感じることも出来る作品です。
あらためて本作を観てみると、戦国期印文硬陶に相応しく特段に薄造りでありながら、もう一つの特徴である手捏ね成形の跡を内面璧の凹凸や口縁等に看て取れ、同時に素朴さも感じさせます。また装飾的なアクセントとして「S」字形貼花をあしらわれていることも同時代の作品に散見される特徴です。底部には目跡が三本足のように残されており、小動物のような愛らしい印象があります。丸みのある形状とくっきりときめ細かい布目によって、掌中でも愛玩したくなるような作品です。