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粉彩西王母文盤

景徳鎮窯
清 雍正年間(1723〜1735年)
高 3.9 cm 径 31.9 cm

来歴

アウグスト強王(1670〜1733年)旧蔵, ヨハネウム番号 N=183 I.




Jingdezhen ware
Yongzheng period (1723–1735)
H. 3.9 cm Dia. 31.9 cm

PROVENANCE

Augustus II the Strong (1670–1733) Collection, Johanneum mark N=183 I.






柔らかい描線と淡い色彩感覚で彩られた清時代の盤です。粉彩は五彩の顔料に化合物を加えることで新たに生み出された技法で、その釉の濁りによって色彩に奥行きのある濃淡が生まれ、絵画的な立体感を獲得しました。本作が作られたと思われる雍正年間頃にはこの粉彩の技術が極致となり、中国陶磁史を代表するものの一つと云えます。清朝陶磁は繁縟に過ぎると云われることもしばしばですが、この粉彩盤のように余白と文様のバランスが良く、色彩も柔和で美しい作品は幅広い蒐集家に受け入れられる魅力があると云えるでしょう。

霊芝を右手に携えた麗女、彼女が伴う鹿と童子が持した桃を見ると「西王母」の画題であることが分かります。西王母は中国古来の仙女で、彼女の有する3000年に1度だけ実を結ぶ「仙桃」を食すと寿命が伸びるという伝説があり、不老長寿を暗示する非常におめでたい文様として知られています。また、鹿の音がロクであることから禄に通じ、俸禄を得る、すなわち仕官を寓意しています。このように描かれる文様全てに意味が含まれ、吉祥図様を重層的に表す点は清朝工芸の特徴の一つと云えます。

裏面は無地ですが、中央にある「N=183 I」と刻された番号は重要な意味を持っています。これはポーランド国王およびザクセン選帝候であり、芸術の庇護者として知られるアウグスト強王(1670~1733年)のコレクションナンバーです。ザクセンの首都であったドレスデンには、彼の蒐集した数万点に及ぶ東洋陶磁のコレクションが遺されていおり、18世紀に作成された蔵品目録によってそれらの多くは清朝の雍正年間にあたる1727年までに入手したものと推察される点も貴重です。実際に同様のモチーフ、技法で製作年代がほぼ同じであると考えられる本作より大きな40センチ級の粉彩西王母図盤が現在もドレスデンに所蔵されており、興味深いことにこの粉彩盤と全く同じナンバーが刻まれています。当時リアルタイムで受容された人工の宝石のような清朝陶磁器の美がアウグスト強王を魅了したことは想像に難くありません。この東洋陶磁への強い憧憬によって、のちに彼は欧州初の磁器、マイセンを誕生させることになります。このような作品の持つ歴史のドラマも、蒐集の一つの魅力と云えるのではないでしょうか。