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緑釉鍾

後漢(1世紀〜2世紀)
高 36.7 cm 胴径 29.0 cm

来歴

Peter Hariolf Plesch(1918〜2013年)旧蔵.




Eastern Han dynasty (1st–2nd centuries)
H. 36.7 cm Torso Dia. 29.0 cm

PROVENANCE

Peter Hariolf Plesch (1918-2013) Collection.






漢時代に(しょう)という青銅器を模して作られた緑釉の壺です。緑釉壺は漢代の陶磁器を代表する器形というだけでなく、漢という時代の気分の大きさを体現した好例であり、中国陶磁のシンボルのひとつと云えます。

本作は、同種の作例の中でも鍾の形を忠実に模したもので、金属器的な厳しい造形をしています。帯状になった口縁部、胴部の弦文の力強さにその名残が見られます。緑釉は深く濃いグリーンで、ほとんど銀化が見られないタイプです。この重厚な趣きを見ると、緑釉陶器は緑青を纏った銅器のイメージに連なるものとも考えられるかもしれません。本器は祖型から離れず器形が優れている点で、緑釉鍾の中では比較的早い時期に作られたタイプと考えられるのではないでしょうか。

胴部の帯状に連なる文様は一般に「狩猟文」と呼ばれるものです。漢代に信仰された神仙世界を具現化したもので、山川や神獣が描かれています。狩猟文とされるのは文様中の、弓矢を手に騎馬した人物が振り返り猛獣を射抜かん、とする象徴的な場面があるからです。この意匠は中近東発祥の文様ですが、のちに遠く極東の日本へも伝播し、法隆寺や正倉院宝物にも同意匠が見られることはよく知られているところです。

旧蔵者Peter Hariolf Plesch(1918〜2013年)は、英国のOriental Ceramic Societyのメンバーでもあった正統派のコレクターです。そのコレクションは多分に学究的な要素を含んでいましたが、彼は同時に高い審美眼も持ち合わせていました。その蒐集の極致とも云えるのが、1959年に氏が入手した汝官窯の水仙盆です。汝窯をも蔵した彼の高い目筋によって選ばれたこの漢緑釉鍾は、一般的なものとは一味違う美質が通っているようです。