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白磁輪花盤 「官」字銘

定窯
晩唐(9〜10世紀)
高 3.3 cm 径 13.4 cm

来歴

Bluett & Sons, ロンドン.
Carl Kempe(1884〜1967年)旧蔵.


所載

Gustaf Lindberg「Hsing-Yao and Ting-Yao」『The Bulletin of the Museum of Far Eastern Antiquities』no. 25, The Museum of Far Eastern Antiquities, 1953年, 図版49, 図44.
Bo Gyllensvärd『Chinese Ceramics in the Carl Kempe Collection』Almquist & Wiksell, 1964年, 図版338.
Thomas Dexel『Frühe Keramik in China』Klinkhardt & Biermann, 1973年, 図版58c.
Margaret Medley『T'ang Pottery and Porcelain』Faber and Faber,1981年, 図版115.




Ding ware
Late Tang (9th–10th centuries)
H. 3.3 cm Dia. 13.4 cm

PROVENANCE

Bluett & Sons, London.
Carl Kempe (1884-1967) Collection.


LITERATURE

Gustaf Lindberg, “Hsing-Yao and Ting-Yao”, The Bulletin of the Museum of Far Eastern Antiquities, no. 25, The Museum of Far Eastern Antiquities, 1953, pl. 49, fig. 44.
Bo Gyllensvärd, Chinese Ceramics in the Carl Kempe Collection, Almquist & Wiksell, 1964, pl. 338.
Thomas Dexel, Frühe Keramik in China [Early Ceramic in China], Klinkhardt & Biermann, 1973, pl. 58c.
Margaret Medley, T'ang Pottery and Porcelain, Faber and Faber, 1981, pl. 115.






 洗練された造形をした輪花の盤です。磁胎は薄く作られていますが、その胎土はよく精錬され焼き締まっており、弱い印象は全くありません。釉薬も大変上質です。宋代の名窯として名高い「定窯」は、晩唐期には既に優れた形と白さにおいて早くも完成期を迎えていたことが、本作のような優品から看取されるでしょう。

本作の底部を見ると「官」の銘が刻されており、定窯作品の中でも特別な宮中献上用の精品であった可能性が示唆されます。こうした有銘の例は極めて希少で、江南地方で勢力を築いた呉越国の初代国王銭鏐の父銭寛(せんかん)、母水丘(すいきゅう)氏の墳墓埋葬品などの例が知られるのみです。銭寛は900年、水丘氏は901年に埋葬されており、晩唐期には「官」字銘が刻された最高級の白磁が作られた年代の分かる早い例として知られています。またこれら在銘白磁が、国王クラスの上流階級のために作られた最上級の白磁であったことが判明する点も大変重要です。「官」銘を有する白磁は、のちの五代〜宋初まで作られ続けますが、胎がより薄く、高台径も小さくなるなど、全体的に繊細な作りとなっていきます。このケンペコレクションの白磁輪花盤は一見五代の典型のようにも見えますが、五代や宋初の作例と比較すると高台が広く安定感があり、輪花の造形も力強い点などにややクラシカルな唐代の要素が感じられます。本作は宋磁へと繋がっていく晩唐という時代を象徴するような一品と云えるでしょう。

旧蔵者Carl Kempe(1884〜1967年)はスウェーデンを代表する中国陶磁蒐集家で、特に優れた白磁と青磁のコレクションで知られています。彼の蔵品は美的なレベルの高さと、学究的な要素を兼備した作例が多い傾向があり、「官」字銘を有するこの輪花盤は、まさにケンぺコレクションといった趣をもっています。この輪花盤は貴重な在銘定窯白磁として度々書籍でも言及されるなど、中国陶磁史の中でも重要な品として知られています。