把手が龍の意匠になった龍耳瓶は初唐期を代表する器形の一つです。口縁から肩へと長く伸びる双耳の造形はギリシア陶器に見られるアンフォラや西アジアのガラス器との関連性も指摘されており、どことなく西洋的な雰囲気も漂っています。龍耳瓶が作られたのは大唐帝国の繁栄の礎が築かれた時期に当たるため、その時代の気分の大きさを反映したような、大型で力強い作品が多い印象です。
本作においても、躍動感に満ちたうねりのある龍耳の造形にその感覚が看取されます。盤口を龍がしっかりと食らいつき、顎の力が漲っています。耳やたてがみの勢いもよく、背中の五つの鋲はリズミカルな意匠となっています。瓶の器形は鋭く且つ流麗で、引き締まった頸部から胴が強く張り出し、また底部に向けて引き締まり全体にメリハリが効いています。透明釉がわずかに青味がかっており、やや青磁のように見えることも初唐期の白磁の釉調の特徴でしょう。
古い箱が誂えられており、『宋窯 龍頭缾』と箱書きされています。漢代や唐代の器物が研究途上だった頃、我が国ではそれらを通称で「宋窯」と暫定で銘打っていました。この箱書から当時における、鑑賞陶磁及び中国陶磁研究の、黎明期の雰囲気を垣間見ることが出来ます。