繭山龍泉堂.
Mayuyama & Co., Ltd., Tokyo.
北宋期の磁州窯で作られた長頸瓶です。素地が灰色であるために白土でもって総体を化粧掛けすることで、白磁とは異なる柔らかい白色のやきものとなっています。磁州窯作品は高級な磁器とは違い民間日用のための粗略な雑器ですが、それ故に宋代民衆のエネルギーが感じられるその独自の魅力が愛好されています。技法も多様で、特に白地に黒釉を掛け、文様の部分掻き落とした白黒の器は磁州窯の代名詞のように扱われています。
本作はその磁州窯作品の中で最もシンプルな白無地の器です。厚みのあるがっちりとした作りで、文様もなく一見派手さはありません。しかしながら、とろりとした白釉の得も云われぬ色彩と、そこに線状に染み込んだ赤い土銹が自然な文様となり抽象的な趣を生み出しています。見る面によって様々な表情があり、しみじみと鑑賞したくなる一品です。
白無地に土銹の染み込んだこれらの一群は、北宋大観二年(1108年)河北省鉅鹿を襲った漳河の大洪水によって埋没したものが20世紀初頭に発掘され市場に流入したものと云われ、「鉅鹿」「鉅鹿手」といった呼称で愛玩されてきました。本作も古く龍泉堂で扱った一品で、鉅鹿手らしい風格が感じられます。