Christie‘s ニューヨーク, 1983年11月30日, lot 91.
伝 Robert Chang(1927~2024年)旧蔵.
Christie‘s New York, 30 November 1983, lot 91.
Robert Chang (1927–2024) Collection, by repute.
明朝後半期、萬暦年間(1572~1620年)に宮中で使用された大甕です。水を張り、魚を放ち、水蓮などを愛でたかもしれません。本作が制作された萬暦年間は王朝末期の退廃と停滞の時代でありましたが、陶磁器を通して観ると大型の器形や多種多様な造形の作品が生み出された時代であり、明代陶磁の集大成ともいえる時代です。
本作の魅力はなんといっても、鱗の一枚にいたるまで精緻に描かれた珠を追う飛龍の迫力であり、非常に濃厚な発色の青花は西アジアよりもたらされた「回青」と呼ばれる良質なコバルト顔料によるもので、文様に更なる力強さを加えています。そしてその主題を支える、特大かつほとんど歪みのない器体から往時の官窯の技術力が感じられます。こういった充実した作品の様相は嘉靖や隆慶の気風を継承する萬暦でも前期の作とみなされ、明朝最後の輝き張居正(1525~1582年)政権期在りし日々の威風堂々たる風格を感じていただけるでしょう。
旧蔵者とされるRobert Chang(1927~2024年)は、香港で活躍した著名なコレクター兼ディーラーでありました。2006年の氏の売立では、清朝官窯が当時の史上最高額で落札される作品が含まれるなど、多数の優品を所蔵していました。本作に関しては氏旧蔵という確証こそありませんが、そのような人物の好みに適う優品といえるでしょう。