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五彩アラビア文字盤(呉須赤絵)

漳州窯
明(17世紀)
高 7.9 cm 径 39.5 cm

Zhangzhou ware
Ming dynasty (17th century)
H. 7.9 cm  Dia. 39.5 cm




明時代に福建省の漳州窯でつくられた、直径が40センチ近くもある呉須赤絵の大型の盤です。

滑らかに焼き上がった白磁は温かみのある白色で、赤と緑の透明感のある明るい色彩を引き立たせています。見込みには、大小合わせて9つの円が描かれ、それらの内側と口縁にかけての空間の随所にアラビア文字が軽やかに書かれています。裏面に目を向けると、自由闊達に描かれた簡略な線文が等分に配置され、高台は漳州窯の盤に散見される焦げもなく、独特の砂のくっつきも少量しか付着していません。粗雑な印象が強い漳州窯のやきものですが、本作は素地の白さや滑らかさ、絵具の発色、底面の焦げが砂のくっつきも軽微で綺麗なあがりの上手の一品と云えます。

この見込みに書かれたアラビア文字はコーラン第112章のアッラーをたたえる句で、17世紀頃、当時南海と呼ばれていた現在の東南アジアに住むイスラム教徒が好んで愛誦していたそうです。同手の呉須手大盤が、ジャカルタ国立博物館蔵のものを筆頭に複数確認されていますが、それらに記されているのも同聖句となっています。

漳州窯は明時代前半から、赤絵に限らず呉須手のものを輸出目的に多量に生産していた民窯で、日本や東南アジアのみならず、ヨーロッパやエジプトにも輸出していました。日本へも江戸時代に将来しており、赤玉香合や玉取獅子の鉢などが茶人に愛玩されていました。そして本作は、インドネシアを始めとするイスラム教徒が多い東南アジアの国々向けに作られていたものと考えられます。当時の漳州窯ではこのように輸出先の享受者の好みやニーズに合わせて作り分けていたことが覗われます。